「おっかのうえ~ひなげしの花で~」
皆さんもどこかで聞いたことがあるフレーズではないでしょうか?約45年前に大ヒットしたアグネス・チャンさんの曲の一節です。当時は、音楽番組にも沢山出演していましたし、人気歌手という印象も残っているでしょう。
また、お世辞にも上手とは言えないカタコトの日本語を話すというイメージもありますかね。私は、45年前には生まれていませんでしたが、音楽番組やバラエティ番組に出ていたので、そんな印象を持っています。
そんな、アグネス・チャンさんですが、その後は、初代日本ユニセフ協会大使やUNICEF親善大使にも任命されたり、スタンフォード大学院の博士号が授与されたりするなど、様々な活動を行っています。
今回はそんなアグネス・チャンさんについて紹介していきましょう。
アグネス・チャンとは
アグネス・チャンさんは、1955年に香港で生まれた歌手・エッセイストです。カトリック教徒で、「アグネス」は洗礼名から来ています。1972年に「ひなげしの花」という曲で日本デビューしました。冒頭に書いた一節の曲ですね。そして、その後も数多くのヒット曲を生み出し、香港や日本だけでなく、台湾やアメリカなど世界で活躍しています。
また、「歌で平和を」という活動を40年以上も行っていて、120ヶ所以上での『世界に届け平和の歌声コンサートツアー』や『UNICEF親善大使』としての功績もあり、2008年の日本レコード大賞では特別賞を受賞しました。このようにボランティア活動やチャリティー活動にも熱心に取り組んでいることでも有名な人です。
初の日本ユニセフ協会大使に任命される
歌手として活躍する中で、1998年には日本ユニセフ協会大使に就任しており、日本ユニセフ協会やUNICEFが行うボランティア活動やチャリティー活動を通じた取り組みに参加し、平和を訴えています。タイやスーダン・東西ティモール・フィリピン・カンボジアなどを視察し、その地域の現状や実態を伝えてきました。
現在の日本ユニセフ協会大使は、サッカー元日本代表の長谷部誠さんが務めていますが、初の日本ユニセフ協会大使はアグネス・チャンさんでした。お二人とも普段のチャリティー活動などが認められたのではないでしょうか。
日本ユニセフ協会大使としてのアグネス・チャンの役割
日本ユニセフ協会大使に就任して以降、アグネス・チャンさんはアフリカやアジア・中東諸国を中心に幾度となく足を運んでいます。活動の中心的な存在となり、女性や子どもたちの権利を守るためにボランティア活動を盛んに行っていました。
2016年には、17年以上活動してきた日本ユニセフ協会大使としての活躍が認められて、ユニセフ・アジア親善大使に就任し、より貧困・平和を訴える社会奉仕に取り組むようになりました。
日本ユニセフ協会大使となる前の活動
歌手として活動しており、日本では「ひなげしの花」という曲でデビューしたと紹介しましたが、その時はまだ17歳でした。翌年1973年には高校野球の入場行進曲にも選ばれた「草原の輝き」という曲で日本レコード大賞新人賞に輝き、3年連続で紅白歌合戦にも出場しました。その後も50枚以上のシングル発売、20枚以上のアルバムを発表しています。
また、1974年に上智大学国際学部へ入学、そして1976年にはなんと芸能活動を休止しカナダのトロント大学へ留学をするなど、学業にも力を入れていたようです。大学卒業後には、再度日本での芸能活動を再開し、協会大使に任命される前から前述したようなボランティア活動も行っていました。
日本ユニセフ協会大使とは
日本ユニセフ協会大使は、UNICEFの広報や募金活動を推進するためのメッセンジャーという役割を持っています。実際に日本ユニセフ協会大使に任命された人は、広報活動を担うことになっています。
日本ユニセフ協会 歴代協会大使
初めての日本ユニセフ協会大使は、1998年に誕生しました。その時に就任したのがアグネス・チャンさんですが、その後には2007年に医師の日野原重明さん、2016年にはサッカー日本代表(当時)の長谷部誠さんが任命されています。
アグネス・チャンが日本ユニセフ協会大使を務めていた頃の様子
初めて日本ユニセフ協会大使として任命されたアグネス・チャンは様々な活動を行っていました。では、その頃の活動の様子について見ていきましょう。
アグネス・チャン タイを訪問し「子ども買春」の問題を視察
アグネス・チャンさんは、1998年6月に初めてタイに訪れ、海外視察を行いました。公式日程に取り組む傍ら、タイ北部山岳地帯のチェンライを訪れ、児童買春の実態視察を行っています。売春によって実際にエイズ感染させられた子どもと出会ったことで、多くの日本人に世界の実情を知ってもらわなくてはいけないと決意を固めたそうです。
「世界から子どもの兵士をなくそうキャンペーン」
世界には、およそ30万人の子どもの兵士がいることが分かっています。世界から子どもの兵士をなくそうキャンペーンは、子どもを兵士にすることを国際法で禁止し、兵士にした者を処罰するための条約を成立させようと日本政府に求める活動です。
日本政府に求めるための署名活動では、26万5000人以上の署名を集め、実際に1999年には国会への嘆願も行いました。アグネス・チャンさんも現地で兵士を務めていた少年と話し、平和に向けての足がかりを見つけたいと語っています。
「児童と武力紛争」シンポジウムを実施
1998年11月、当時の小和田国連大使やオララ・オトゥヌ子どもと武力紛争国連事務総長特別代表などが参加する、児童と武力紛争シンポジウムが開かれ、紛争において、最も弱い立場にある子どもたちを守る活動を強化するために、様々な議論が交わされたそうです。アグネス・チャンさんはパネリストとして参加しました。
日本ユニセフ協会大使 在任中の苦労
アグネス・チャンさんが日本ユニセフ大使として在任していた頃には、良いことばかりでなく、集まった募金をピンハネして、そのお金で豪邸を建てているという噂が流れてしまったのです。日本ユニセフ協会大使の活動は無報酬であるため、実際には日本ユニセフ協会からは1円も受け取っていないということが分かっています。
アグネス・チャンのその後
貧困の子どもたちを救おうと積極的に支援活動に取り組むアグネス・チャンさんは、ネット上でピンハネの疑惑が噂されてしまいました。しかし、その後も子どもたちの権利を守るための広報・募金活動に力を入れています。
ユニセフ・アジア親善大使に任命される
1998年の任命から17年以上に渡り幅広く活動してきたアグネス・チャンさんは、2016年にユニセフ・アジア親善大使(UNICEF親善大使)に任命されています。子どもたちが持つ権利の推進や人道問題を訴えてきたその功績が認められ、更に支援活動の幅を拡げていきました。アグネス・チャンさんは、その後も変わらず子どもたちの権利を守り推進するUNICEFの活動に協力しています。
シリア周辺国を海外視察
シリア国内で支援を必要としている子どもたちは、600万人ほどいるそうです。そして240万人が周辺国に逃げているので、800万人以上の子どもの難民がいるそうです。そこで、ユニセフ・アジア親善大使に就任したアグネス・チャンさんは、2017年、シリア難民の受け入れ数が多いヨルダン・レバノン・トルコを訪れました。
シリアから逃れた子どもたちのその半数は学校に通っていません。難民キャンプや非公式テント居住区・学校・家庭などを視察し、帰国後の報告では、シリアの子どもたちの現状を伝え、教育を受け続けるための体制を整える活動が必要だと訴えていました。
自伝本が香港の文学賞「金閲奨」を受賞
さて、UNICEF親善大使以外での活動も見ていきましょう。2017年には、アグネス・チャンさんによる自伝「38個人生啓示一陳美齢自伝」が香港の文学賞「金閲奨」を受賞しています。アグネス・チャンさんにとって初となる中国語での書き下ろし本であり、彼女にとって大きな功績となっています。
台湾の書展「鰧飛創意–香港2018」に文化大使として出席
2018年2月には、台湾の書展「鰧飛創意–香港2018」に文化大使として出席を果たしており、芸術分野においても活躍しています。「鰧飛創意–香港2018」は、2018年2月6日~8日まで開催されていました。
そもそもUNICEF親善大使とは?
公式サイトには、「世界の子どもたちが直面する問題を訴え、子どもたちへの支援を呼びかけるため、全くの無報酬で、ユニセフの活動に協力くださっています。」と記載されています。
UNICEFの活動を理解や賛同し、日頃から募金などの支援活動を積極的に行っている方が就任されているのではないでしょうか。もちろん、UNICEFから任命された人しか就任は出来ません。
アグネス・チャン以外のUNICEF親善大使
UNICEF親善大使に選ばれているのは、アグネス・チャンさんだけではありません。有名サッカー選手のデイビット・ベッカムさんもUNICEFの国際大使として活動を行っています、2016年にはHIV感染率が最も高い国であるスワジランドを訪問しています。その他にも、世界的なシンガーソングライターのケイティ・ペリーさんやイギリスの俳優であるオーランド・ブルームさん、日本人では黒柳徹子さんなどがUNICEF親善大使として任命されています。
著名人が多いUNICEF親善大使
歴代のUNICEF親善大使は著名人が多く任命されています。影響力がある著名人がその名声を活かすことで、UNICEFが行っている活動の必要性や大切さを多くの人々に呼びかけられるのです。
参照: UNICEF親善大使一覧
まとめ
今回は、歌手やエッセイストとしてだけでなく、日本ユニセフ協会大使やUNICEFの親善大使として活躍をされているアグネス・チャンさんについて紹介してきましたが、彼女は、募金をピンハネしたお金で豪邸を建てたという噂が流れてしまいました。親善大使は無報酬とのことなので、違うのではないかなと思います。
ただ正直、あの写真(※)を見るとそんな印象を与えても仕方ないのかなとも思います。『貧しい国の子供たちを助けるために支援しましょう!でも私はこんな豪邸に住んでますけどね・・・』と言わんばかりの写真でした。完全にそのイメージだけが残ってしまったって感じがしますが、アグネス・チャンさんだけの問題ではなかったようにも思います。
※ご自宅であろう大豪邸を背景に「恵まれないわたしたちはあなたのご支援を必要としています 日本ユニセフ協会大使 アグネス・チャン」という言葉と共にアグネス・チャンさんが写っている写真
それにしても、なぜこんなに叩かれているのでしょうか。アグネス・チャンさんについては、この件以外でも叩かれてしまう理由もあるのでしょう。色々と良い活動を行っているだけに残念に思えますが、有名人が寄付や慈善活動をするとネット上では叩かれやすい傾向にあると感じます。
例えば、最近ではタレントのローラさんが1000万円を寄付した際に「セレブ気取り」などという記事があり、ネット上ではそれに賛同するような意見も見受けられました。過去には、ソフトバンクの孫社長が東日本大震災の際に100億円の寄付を表明した際にもお金の流れが不透明、売名行為などの批判もありました。
日本では、寄付や慈善活動を公に表明すると、売名行為や自分をよく見せるための偽善であり、ひっそりとやるべきだという論調があるのかもしれません。
有名人だからこそ影響力があってその支援の輪が広がることは良いことだと思います。最近では、ZOZOTOWNの前澤社長がTwitter上で3歳の子どもを救うキャンペーンの情報を拡散させていました。その結果多くの人が知ることになり結果的に目標額の3億5000万円への目処が立ったそうです。
アグネス・チャンさんについても、ネット上で批判されたりもしていますが、結果的に本当に困っている人達を救う形になっているのであれば、応援したいですね。